市場経済の地域性と複線的歴史

歴史制度分析は、制度への関心を歴史にまで広げ、制度がどのようにして形成され、存続してきたかのメカニズムを分析した。そして、そこでの鍵概念が、制度は一度作り出されると、その慣性から変更されにくく、長く存続するという経路依存性であった。

この経路依存性の概念が、制度形成での初期条件の概念と結びついたとき、ある社会はほかの社会とは異なる、独自の経済発展のパターンとスピードをもつという議論が生まれる。

また、二つの社会が、ある時点において同程度の経済発展度であったとしても、そのときの初期条件のちょっとした違いと経路依存性によって、この二つの社会は全く異なる経済発展パターンを経験するのみならず、二つの社会における経済発展度の格差は時間とともに拡大していくという議論が可能となる。

参考文献:
比較制度分析に向けて』  青木昌彦(NTT出版、2001年)
比較歴史制度分析』  アブナー・グライフ 神取道宏・岡崎哲二訳(NTT出版、2009年)
「制度の経済史」岡崎哲二 『社会経済史学の課題と展望―社会経済史学会創立70周年記念』  社会経済史学会編(有斐閣、2002年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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