銅貨の氾濫と経済危機

貴金属が潤沢にあり、金銀貨の貴金属貨幣の品位と重量が守られているときには、健全な貨幣制度はイスラーム経済の繁栄を促した。

しかし、先に14世紀の末から15世紀の初頭にかけてのマムルーク朝後期にエジプトを襲った経済危機について分析したとき指摘したように、時代とともに、貴金属に基づく貨幣制度を維持することが困難になり、代わりに卑金属貨幣の銅貨が市場に氾濫することによって、しばしば経済危機が引き起こされた。

オスマン帝国は貨幣制度の再編をはかり、市場を安定することに意を用いた。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第6章:統治術としての貨幣政策  加藤博(書籍工房早山、2010年)
「中世エジプトの貨幣政策」加藤博 『一橋論叢』76巻 6号、1976年

■関連知識カード/章説明他:
マムルーク朝末期の経済危機


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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