「顔の見える」イスラーム金融

これに対して、イスラーム金融は、貸し手と借り手の直接的な関係性をより重視する。

ムダーラバでは、貸し手と借り手があたかも共同事業者のように1つのビジネスに取り組み、ビジネスの儲けと損失を両者で分け合う。また、ムラーバハでは、貸し手と借り手の間で、売買する商品についての様々なやりとりが行われながら、価格も含めた売買の合意を形成していくのである。このように「顔の見える」金融を志向するイスラーム金融では、自分の富の獲得には常に他者が関わっていることを意識させるしかけが内包されているのである。

参考文献:
お金ってなんだろう?あなたと考えたいこれからの経済』第7章:これからの経済を考えるヒントって?  長岡慎介(平凡社、2017年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』第7章第2節:なぜイスラーム経済は再び注目を集めるようになったのか  加藤博(詩想舎、2020年)

□関連知識カード:
 イスラーム事業体への評価
 小さな組織・ネットワークによる信用・短期的投資


 

この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



【紙派のかたはこちらをどうぞ】

◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック