イスラーム世界は三大陸の結節点

中東イスラーム世界が都市社会であることを、アメリカの社会経済学者、ジェーン・ジェイコブズは、「初めに都市ありき-そして農村が発展する」という刺激的な言葉から始まる『都市の原理』のなかで論じた。* 

この議論は、14世紀後半のアラブの思想家、イブン・ハルドゥーンの都市経済論(第一巻第8章)と軌を一にしている。

参考文献:
都市の原理(SD選書)』  ジェイン・ジェイコブズ 中江利忠・加賀谷洋一訳(鹿島出版社、1971年)

* この著作のなかで、ジェイコブズは、農業中心史観を批判して次のように述べる。

「つまり、われわれが普通農村の仕事と考えているものの起こりは、農村ではなくて都市だったということである。多くの分野—経済学、歴史学、人類学—で流布している理論は、農村経済を基盤にして都市が成立っている、として疑わない。もし私の観察と推論が正しければ。その逆が真実である。農作業を含む農村経済は直接、都市の経済と都市の仕事をもとに成立っているのである。農業優位のこの理論(私の考えではドグマ)が都市についての従来の仮説にあまりに徹底してしみこんでいるため、この章では緊急要件として、この点を扱おうと思う」。(『都市の原理(SD選書)』3頁)

□参照知識カード:
もしも「西欧近代」が普遍的モデルでないとしたら 第一巻第8章
イブン・ハルドゥーンの「田舎の文明」
イブン・ハルドゥーンの「都会の文明」


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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