アマルティア・センは、アダム・スミスにまで経済学の起源を遡及し、経済学の起源として「倫理学」と「工学」の二つを挙げる。そして、あまりにも「工学的」アプローチを重視しすぎる現在の経済学に警鐘を鳴らし、「倫理学的」アプローチの再生を主張した。
センが言及するアダム・スミスは近代経済学の祖と考えられており、『国富論』におけるいわゆる「みえざる手」、つまり市場のメカニズムの指摘が、センのいう経済学における「工学的」アプローチの出発点であるとされている。しかし、現在、スミスの再評価が進んでおり、そのなかで、先に指摘したように、スミスが道徳哲学者であり、「みえざる手」の指摘の背後に、「モラル」があったとの指摘がなされている。
参考文献:
『経済学の再生-道徳哲学への回帰』 アマルティア・セン 徳永澄憲ほか訳(麗澤大学出版会、2002年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック