1924年、トルコ共和国の指導者、ムスタファ・ケマル(ケマル・アタチュルク)によってカリフ制は廃止された。
もっとも、そのために、イスラーム世界に政治変動が起きたわけではない。すでに長い間、現実の政治での、カリフの不在と多数の政治体の併存は既成の事実となっていたからである。
カリフ(後継者)制の廃止は現実の政治の展開を追認したにたに過ぎなかったが、少なくとも一部の有力なイスラーム知識人の間に動揺と反発をもたらした。
実際、それは「イスラーム信徒共同体(ウンマ)は一つである」というイスラームの理念のあからさまな否定であり、イスラームが体制であった時代の終焉を告げるものであった。
参考文献:
『イスラーム世界の危機と改革 (世界史リブレット) 』 加藤博(山川出版社、1997年)
『アラブの人々の歴史』 アルバート ホーラーニー 湯川武・阿久津正幸訳(第三書館、2003年)
『トルコ近現代史―イスラム国家から国民国家へ』 新井政美(みすず書房、2001年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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