世界金融危機によって明るみになったグローバル資本主義のもう１つの構造的問題は、金融商品の複雑化に伴う貸借関係の分離である。

すでに述べたように、アメリカの投資銀行による住宅ローンは、他の優良な債権と抱き合わせで証券化されて販売された。この証券化では、様々な債権がいったんひとまとめにされ、償還を受けられる優先順位が付けられた証券に組み直されて（これをトランチングと呼ぶ）販売された。

こうしたトランチングの繰り返しによって、証券の買い手にとっては、どんな借り手のローンがその中に入っているのかが見えにくくなり、証券購入の判断は、格付け会社の評価に依存せざるを得なくなったのである。

参考文献：
『資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす（日経ビジネス人文庫）』　　竹森俊平（日本経済新聞出版、2014年）

□関連知識カード：
　世界金融危機

 

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★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済（上）　資本主義の危機とイスラーム経済の登場』を構成している「知識カード」の一枚です。

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