市場は自生的社会秩序のモデル

もっとも、市場経済を取り上げるについては、こうした時代の要請という受身な理由のほか、もうひとつ能動的な理由がある。

それは、市場を自生的社会秩序のモデルあるいはアナロジーとして取り上げることである。ここで自生的社会秩序とは、上からの権威、規範、制度によるのではなく、個、慣行から出発し、下からの交渉、取引の積み重ねによって形成される社会の秩序を意味する。*

参考文献:
イスラム世界の経済史』 序  加藤博(NTT出版、2005年)
日経BPクラシックス 隷従への道』  フリードリヒ・ハイエク 村井章子訳(日経BP、2016年)

* われわれが冷戦体制から学んだもっとも重要なことの一つは、一見すると迂遠のように思われるとしても、下から自主的、自生的な積み上げによって形成された社会でない限り、長続きしないということである。もちろん、だからといって、下からの交渉、取引の積み重ねによって、社会秩序が自動的に形成されるわけではない。社会に秩序がもたらされるためには、上からの権威、規範、制度の存在は不可欠である。


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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