香辛料サフランを軸にした遠隔貿易

アラビアンナイト以外にも、イスラーム社会の高い流動性を謳う文学作品は多い。

12世紀初めの散文作家ハリーリー(1054~1122)* は、当時の商人の言葉として次のような文章を紹介している。

わたしはペルシアのサフランを中国にもっていきたい。中国では、高値で売れると聞いたからだ。そしてそのあとは、中国の陶磁器をギリシアに、ギリシアのブロケードをインドに、インドのはがね製品をアレッポに、アレッポのガラス器をイエメンに、イエメンの縞模様の布地をペルシアにもっていきたい。(ブローデル『文明の文法』Ⅰ)

参考文献:
文明の文法』  フェルナン・ブローデル 松本雅弘訳(みすず書房、1995年)
スパイスが変えた世界史―コショウ・アジア・海をめぐる物語』  E /F. B. ユイグ 藤野邦夫訳(新評論、1998年)

* イラクの物語作者、アラビア語学者。父が絹商人であったところからハリーリー(絹屋)と呼ばれた。1101年~1110年に『マカーマート』を発表。これはサルージのアブー・ザイドという放浪の主人公を中心にした51編の物語だが、アラビア語押韻散文サジュー体による修辞の極致をなす名作とされている。[編集部]


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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