鳥の食卓を奪う

採食に関する霊長類の進化史は、「鳥の食卓」への侵攻の歴史だ。

霊長類が現れるより昔から、植物と鳥類は熱帯雨林でともに進化してきた。植物は鳥に食べてもらい種子を運んでもらうために、高栄養な果実を進化させている。初期の霊長類は、天敵から身を潜め鳥との競争にならないような、小型の夜行性昆虫食者であった。

しかしその後、霊長類は大型化と優れた樹上移動という道を進んだ。やがて鳥の体サイズを超えたサルI):鳥は飛ぶために体を軽くする必要があり、体重を大きくすることにはおのずと限界があったのだ。は、昼間の樹冠の果実、という鳥たちの食卓を奪いにかかった。II):霊長類と同時期に現れたのがコウモリの仲間だ。彼らも鳥との争いを避けるため、夜行性に進化した。コウモリとサルとはその後、道を分かったことになる。


■参考文献
『サルはなにを食べてヒトになったか―食の進化論』  山極寿一(女子栄養大学出版部、一九九四年)

『人類進化論―霊長類学からの展開——』第二章・第三節 熱帯雨林における霊長類の進化山極寿一(裳華房、二〇〇八年)

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I. :鳥は飛ぶために体を軽くする必要があり、体重を大きくすることにはおのずと限界があったのだ。
II. :霊長類と同時期に現れたのがコウモリの仲間だ。彼らも鳥との争いを避けるため、夜行性に進化した。コウモリとサルとはその後、道を分かったことになる。