マスラハ

文字通りの意味は利益であるが、イスラーム法学上は公共の利益、公共福祉の意。

ただし、資本主義社会の公共利益や社会福祉とは異なり、「公と私」を貫く概念である。つまりマスラハはアドル/アダーラ(公正)と同じく、神から命じられるイスラームの理念のほか、社会の構成員に集団的に共有されている利益をも包含する、いわば福祉の土台となる概念となっている。* 

参考文献:
「イスラムの経済思想」加藤博 『経済思想11 非西欧圏の経済学―土着・伝統的経済思想とその変容』   八木紀一郎編(日本経済評論社、2008年)
イスラーム政治論 シャリ-アによる統治』  イブン・タイミ-ヤ 湯川武・中田考訳(日本サウディアラビア協会、1991年)
統治の諸規則』  アル=マーワルディー 湯川武訳(慶應義塾大学出版会、2006年)
イスラームの国家・社会・法』  H.ガーバー 黒田壽郎訳(藤原書店、1996年)

*  「人はその本性上社会的なものであって、その幸福(マスラハ)達成のためには社会を形成し助け合わなければならない。(イスラーム法学者イブン・タイミーヤの言葉)」(「湯川武「ヒスバとムフタシブ-中世イスラームにおける社会倫理と市場秩序の維持」 『国際大学中東研究所紀要』Ⅲ、1987・88年」)

■関連知識カード/章説明他:
ウンマ(共同体)におけるマスラハ(公共の利益)の実現
シャリーアを補助する規範群:カーヌーンとウルフ

 


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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