市場経済と政治権力

市場経済の拡大は、政治と深く関係して展開した。商人的経済の「第一の局面」においては、経済は政治から離れ、政治の外に展開していた。

「中期の局面」においては、経済は伝統的な政治権威の下に置かれたが、当時の政治権力は商人的経済を統制するほど強力ではなかった。政治は商人的経済を統制できず、逆に、破壊する可能性があった。

しかし、「近代の局面」では、経済と政治の関係は変化した。商人的経済の内部的発展のため、政治権力による「商人的経済」に対する支配はきわめて容易になったのである。その典型が課税である。

ブローデルにとって、資本主義とは、このように、市場経済と政治経済が一体となった社会体制であった。彼は先に指摘したように、資本主義を、「交換の基礎を、たがいに求め合う需要におくのと同程度あるいはそれ以上に、力関係におく権力の蓄積であり、避けられぬものか否かは別として、他に多くあるのと同様な一つの社会的寄生物なのである」と述べた。

参考文献:
経済史の理論(講談社学術文庫)』  J.R.ヒックス 新保博・渡辺文夫訳(講談社、1995年)
物質文明・経済・資本主義』  フェルナン・ブローデル 村上光彦ほか訳、(みすず書房、1985,1986/88,1995/99年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック

 

この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます