ロックの所有権論における、腐敗させないうちに有効に利用しうる限りで所有権を認めるという制約条件は、腐敗しない貨幣が導入されたことによって意味をなさないものとなった。これにより、貨幣価値の成長を自己目的化する経済活動に端を開くこととなる。
また、他者を傷つけない限りで所有権を認めるというもう一つの制約条件については、すべての生産活動が環境負荷を生み出し、生産基盤を蝕んでいくという環境制約が顕在化した現代においては、もはや、成立しないのではなかろうか。※
■参考文献
『環境と経済を再考する』 第一章・第四節 西洋哲学と物質的側面 倉阪 秀史 二〇〇六年
『ジョン・ロックの自由主義政治哲学』 下川 潔 二〇〇〇年
★この記事はiCardbook、『なぜ経済学は経済を救えないのか(上)視座と理念の転換』を構成している「知識カード」の一枚です。