資本主義の崩壊

資本主義が100%浸透し、地球全体が1つの市場として現れるということは、こうした混乱が地球規模で起こりうることを意味している。ひとたび混乱が起これば、市場の価格メカニズムが機能不全に陥り、これまで述べてきた資本主義の長所は一気に失われる。しかも、資本主義が地球全体に浸透していることによって、我々には逃げ場はない。

このように資本主義が地球全体を完全に覆うという経済学の理想が実現した途端、資本主義の崩壊の大きな危機が訪れるのである。それは、無菌室の環境に置かれ、免疫機能が弱ったところに突然病原体が侵入しても為す術がない状況にたとえることができるだろう。*

参考文献:
資本主義はどこへ向かうのか―内部化する市場と自由投資主義』  西部忠(NHK出版、2011年)
資本主義・社会主義・民主主義(日経BPクラシックス)』  ヨーゼフ・シュンペーター 大野一 訳(日経BP、2016年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.3 基本概念・基礎用語編』第1章第1節:外部経済としての「制度」  加藤博(詩想舎、2020年)

*「資本主義は、その経済的失敗のゆえに崩壊するのではない。反対に、経済的成功のゆえに没落する。それは資本主義文明の衰退というものなのである。(J.A.シュンペーター 『資本主義・社会主義・民主主義』)

□関連知識カード:
 市場経済が抱えるパラドックス

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(上) 資本主義の危機とイスラーム経済の登場』を構成している「知識カード」の一枚です。



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