国策としての重商主義経済

このように、近世ヨーロッパの重商主義経済は、政治や軍事との結びつきを特徴とした。

国家は、外国貿易からの利益を得るために、東インド会社に典型的にみられる特権を付与した法人企業を組織させた。かれらはカプチュレーションと呼ばれた恩恵的な国際条約に守られながら、商売を行った。

カプチュレーションとは、オスマン帝国が在留外国人に対して認めた通商特権であり、近代になって、オスマン帝国と列強間の不平等条約となった。

東インド会社に代表される特権的企業は自己資本によって、治安維持のための自衛団を組織したが、さらに、ヨーロッパ商人の経済規模が飛躍的に拡大した時代には、この治安維持の役割は、個々の法人企業の手から離れ、それぞれのヨーロッパ商人が所属する国家の軍隊に担われるようになる。

参考文献:
重商主義の経済理論』  小林昇(東洋経済新報社、1952年)

■関連知識カード/章説明他:
オスマン帝国における外国貿易


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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