脳の増大とヒトの集団

霊長類の脳の大きさは、脳全体に占める新皮質の割合(新皮質比)に正の相関性を持つ。この新皮質比はそれぞれの霊長類種が示す平均的な群れの規模が大きくなると上昇する。

これを用いて、化石人類の平均的な集団規模を頭骨の容量から推定すると、二〇〇万年前に脳が大きくなり始めたホモ・ハビリスの頃は五〇人、現代人は一六〇人となる。この値は現代の狩猟採集民の平均的な村の規模一五〇人に近い。

実は、ヒトの脳の大きさが現代人並の一四〇〇~一六〇〇CCになったのは、六〇万年前のホモ・ハイデルベルゲンシスの頃と推測されている。

言葉の登場は二〇万年前以降とされている。それ以前におそらくヒトは、言葉以外のコミュニケーションを用いて一五〇人くらいの集団を築いてきたと考えられるのだ。


■参考文献
『人類進化の謎を解き明かす』  ロビン・ダンバー 鍛原多惠子訳(インターシフト、二〇一六年)原著二〇一六年

「「人類史」のその先へ」  中沢新一・山極寿一(『現代思想』 二〇一七年六月号所収)

 

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(上)「社会」の学としての霊長類学』を構成している「知識カード」の一枚です。

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