共感力の発揮と社会資本の回復

しかし、人々は個人がばらばらに切り離される事態に不安を募らせている。他者と同調できるスポーツの観戦やコンサートホールに多くの若者たちが駆り立てられるのはその証左である。災害地支援のNGO活動への参加や物や住居をシェアする風潮が増えているのは、人々が共感力を使って信頼できる関係を求めていることを物語っている。

いくら安全な環境が整えられても、人々が信頼できなければ安心な社会は作れない。かつて家族や共同体が保障してくれた社会資本を、もう一度取り戻さねばならない。


■参考文献「こころの起源―共感から倫理へ」  山極寿一(『<こころ>はどこから来て、どこへ行くのか』所収 [一五五~二〇〇ページ]  河合俊雄・中沢新一・広井良典・下條伸輔・山極寿一(岩波書店、二〇一六年)

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。

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