かつて今西錦司は、ニホンザルが優劣順位を獲得していく過程を、サルの子どもが母親やリーダーに同化して身に付けていくと考え、それをアイデンティフィケーション・セオリーと名づけたI):たとえば同じチンパンジーでも、食性や道具使用の行動など、地域集団によるサブカルチャーの違いが認められている。この違いの発生に対し、若い個体が自己をあるおとなのサルに同一視し、その対象の行動型を全的に獲得するメカニズムを想定して、群れ中心的な社会的行動の伝承を説明しようとした。。伊谷純一郎も、霊長類の母系社会や父系社会、ヒトリザルなどという生き方や関係の持ち方には、アイデンティフィケーションで説明できるような伝承があると考え、それをカルチャー(文化)よりもっと広い概念カルチュアと呼んだ。
■参考文献
今西錦司、1957. 「ニホンザル研究の現状と課題—とくにアイデンティフィケーションの問題についてー」、Primates, 1: 1-29.
『サルの文化誌』 西田利貞・伊澤紘生・加納隆至編(平凡社、一九九一年)
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註
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