統治の正当性としてのアドル

そして、この神の正義(公正)はイスラームの統治理念でもある。先に述べたように、信徒の共同体であるウンマは同時に「神の共同体」でもあるからである。

神の正義(公正)のウンマでの貫徹、それがイスラームにおける正しい政治のあり方である。体系的なイスラーム政治論を展開したマーワルディー(974~1058)は、次のように、正義(公正)の対概念である不正義(不公正)の矯正をもって、政治の役割としている。

「不正の監視とは、権威によって、不正(マザーリム)をなす者を公正に振舞うように導くことであり、畏怖の念を起させて、相争う者たちが相手を非難しあうことを止めさせることである。(マーワルディー『統治の諸規則』 184頁 )」

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第4章:公正観  加藤博(書籍工房早山、2010年)
統治の諸規則』  アル=マーワルディー 湯川武訳(慶應義塾大学出版会、2006年)


 

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