カメラの眼と人間の眼

人間の眼は主体的な眼です。

眼は人間の内面と深く結びついています。誰かを探すときはほんの小さな気配でも見逃すことはありませんし、見たことのあるものは注視せずともイメージで補完してしまいますし、お腹が空いていると自然に食べ物を探してしまいます。※I):カエルはアメンボに反応して舌を伸ばします。キリンは灌木を見つけると首を伸ばします。自分の捕食対象など生態に応じた対象における「感覚指標」を探しつつ、同時に、それに対して自分の身体を「作用指標」に対して動かして行きます。

つまり、視る主体と見られる客体の間には生理学的な関係があります。

一方で、カメラが何かを視る時にはカメラという主体と、カメラが捉える客体の間には関係がありません。カメラは見ているようで世界をみてはいないのです。

つまり、眼は生物にとって基本的な器官で、生物の知能と身体と深く結びついている「能動的」で「主観的」な眼なのです。一方、カメラは使用者の意思に従う「受動的」で「客観的」な目です。


■参考文献
改めて知りたい、人工知能とは何か?:新刊『人工知能のための哲学塾』第零夜(前編)」 三宅陽一郎 二〇一六年

人工知能は身体を欲している?:新刊「人工知能のための哲学塾」第零夜(中編)」 三宅 陽一郎 二〇一六年

人工知能はどのように自我を獲得するのか?:新刊「人工知能のための哲学塾」第零夜(後編) 」 三宅 陽一郎 二〇一六年

★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>: —— 環境、身体、知能の関係から解き明かすAI—— 』を構成している「知識カード」の一枚です。

人工知能と人工知性
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I. :カエルはアメンボに反応して舌を伸ばします。キリンは灌木を見つけると首を伸ばします。自分の捕食対象など生態に応じた対象における「感覚指標」を探しつつ、同時に、それに対して自分の身体を「作用指標」に対して動かして行きます。