金融資本主義の台頭

しかし、イノベーションを起こすためには多大な費用と時間がかかる。資本主義的欲望に取り憑かれた人々の中には、もっと手っ取り早く富を手に入れたいと考える人々もいた。そこで注目されたのが、現在と将来という異時点をめぐる人々の選好の違いを利用してお金儲けをする金融資本主義である。

次章で詳しく述べるように、この金融資本主義のプレゼンスが大きくなり過ぎたことが資本主義の危機をもたらすことになるのだが、これも富を追求し続けた資本主義が自ら生み出したマモン(mammon、富の悪魔)*なのである。

参考文献:
時間かせぎの資本主義―いつまで危機を先送りできるか』  ヴォルフガング・シュトレーク 鈴木直訳(みすず書房、2016年)

*マタイ福音書六章「汝ら神と富(マモン)とに兼ねつかうること能あたわず」の一節から人口に膾炙したキリスト教用語。地上の富に対するよこしまな欲望、またはその人格化されたものをさす。富を意味するアラム語のマーモーナに由来。[編集部]

 


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