承認のための生死を賭する戦い

しかしそれゆえにこそ、各人の「自由」への欲望は、必然的に「承認のための生死を賭する戦い」へと行き着くことになる。各人が自らの「自由」を主張し合って譲ることがなければ、それは「自由」をめぐるある種の全面戦争とならざるを得ないのだ。※I):「自己意識が本気で『自己自身』たろうとすれば、『相手の存在を否定することで自己の自立性・主体性を守る』という態度をとることになる。」(『はじめてのヘーゲル「精神現象学」』 第二章 自己意識 (講談社現代新書、二〇一〇年))

この戦いを通して、人間は「しゅ」と「」に分かれることになる。死を恐れず戦い、自らの「自由」を相手に承認させた者が主となる。他方、これに敗れたり、戦う勇気を持たなかった者が奴隷となる。※II):これはホッブズ が「万人の万人に対する闘争」と表現したものに近い。ホッブスはあくまで思考実験としてこれを唱えたのだが(『市民論』、『リヴァイアサン』)、中国の春秋戦国時代を経た秦王朝、ヨーロッパの内乱後の絶対王政など、その実例となるような事象は数え上げればきりがない。

■参考文献
『はじめてのヘーゲル「精神現象学」』  竹田 青嗣、西 研 二〇一〇年
『精神現象学』  ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル 原著一八〇七年
『市民論』  トマス・ホッブズ 原著一六四二年
『リヴァイアサン』  トマス・ホッブズ 原著一六五一年


★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。

自由の相互承認
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I. :「自己意識が本気で『自己自身』たろうとすれば、『相手の存在を否定することで自己の自立性・主体性を守る』という態度をとることになる。」(『はじめてのヘーゲル「精神現象学」』 第二章 自己意識 (講談社現代新書、二〇一〇年))
II. :これはホッブズ が「万人の万人に対する闘争」と表現したものに近い。ホッブスはあくまで思考実験としてこれを唱えたのだが(『市民論』、『リヴァイアサン』)、中国の春秋戦国時代を経た秦王朝、ヨーロッパの内乱後の絶対王政など、その実例となるような事象は数え上げればきりがない。