「思惟」から「作用」へ

「作用」は志向性の矢のことです。思惟だけではなく、意識は外へ向かってさまざまな対象に、固有の形を持って働きかける、それが「作用」です。

感情、動作、判断などは、常に何かについての感情、動作、判断であり、それらが「作用」なのです。何かに対して行動しようとすることも何かに対して思うことも、「働きかける」という、より深いレベルでは同義です。

つまり、環境の中で、内面を通じて外へ向かって展開して行く活動の矢が、「作用」なのです。それは単に、環境における対象に対する作用のみならず、自己の内側にある何かについての作用であっても良い。そこから内面を通して世界へ至る精神の流れを記述することができるようになるのです。


■参考文献
『知覚の現象学 I 』  モーリス・メルロ=ポンティ 原著一九四五年

人工知能のための哲学塾』  第一夜 フッサールの現象学 三宅 陽一郎 二〇一六年

ゲーム、人工知能、環世界 考える存在から経験の総体へ、AIのための現象学的転回」 三宅 陽一郎 『現代思想』 2015年12月号 特集=人工知能 青土社 二〇一五年

人工知能のための哲学塾 第一夜「フッサールの現象学」 資料 三宅 陽一郎 二〇一六年

★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>: —— 環境、身体、知能の関係から解き明かすAI—— 』を構成している「知識カード」の一枚です。

人工知能と人工知性
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