海のアジア論

イスラーム経済の後退を説明するのに、基幹交易ルートのユーラシア内陸ルートからインド洋の海上ルートへの意向を指摘する議論もある。その典型が、海のアジア論である。

この理論は、インド洋を介した海路での交易に注目し、近世から近代にかけて、アジア間交易の主要ルートが陸路から海路へと移ったことを強調する。そして、それにともない海路での交易額が陸路のそれを凌駕するようになり、この海路での結びつきを介して、アジア経済圏が形成されたとする。それは、言外に、イスラーム経済圏の衰退を意味する。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 コラム「海のアジア論」  加藤博(NTT出版、2005年)
「世界経済史におけるイスラ-ムの位置」加藤博 『社会経済史学の課題と展望』  社会経済史学会編(有斐閣、2002年)
文明の海洋史観 (中公文庫)』  川勝平太(中央公論社、1997年)
海の帝国―アジアをどう考えるか (中公新書)』  白石隆(中央公論新社、2000年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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