暴力を生み出す心

なぜ、文明社会で急激に暴力が増加したのか。

食糧生産にともなう定住と人口増加による土地の所有意識の強化がその引き金となっているが、実は暴力につながる心的状態はそのずっと前から芽生えていた。それは共感力の増大である。

食物の分配や共同保育によって高められた共感能力は、身を賭して集団のために尽くす心を育てた。それが、土地や資源と集団の固着、音楽や言葉による敵と味方の二分と連合意識の強化によって、集団の外にいる敵に対する攻撃性を増幅させたと考えられる。


■参考文献
『家族進化論』第六章・第九節 戦争の登場と自己犠牲の精神  山極寿一(東京大学出版会、二〇一二年)

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。

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