[コラム]創造性と「機械との共存」~記憶と記録

これは、佐々木 拓哉(東京大学)氏の、『脳と情報——神経回路と記憶のメカニズム——』の「コラム」」を公開したブログ記事です。


コラム~創造性と「機械との共存」~記憶と記録

脳に蓄えられる記憶の本体は、神経回路の神経活動パターンやシナプスの強さです。

次章でも述べますが、こうした生体機能は機械のような正確性を持っておらず、揺らいでいます。さらに、個々の神経細胞は、外界の情報がなくても独立に活動しているため、シナプスの強さや神経活動は常に変わっていきます。時間が経つと記憶が薄れたり、無関係な出来事の記憶と勝手に結びついてしまうのは、神経回路の性質を考えると当然のことと言えます。よって、私たちの脳には残念ながら、機械のように正確な「記録」能力を求めることは不可能です(稀に特殊な記憶力をもった方もいますが)。

逆に、このような性質があるからこそ、私たちは創造的な脳機能を発揮することもできます(次章で述べます)。自らの記憶力の特徴と限界を認識し、機械を使った「記録技術」とうまく共存していくことが大切です。


目次構成:

◎全体の目次構成:
はじめに
推薦文(池谷裕二)
第一章 脳の情報処理を知るには神経回路を知る必要がある
第二章 神経回路の基本的な構造と機能
第三章 神経回路を調べるための実験技術
第四章 神経回路における感覚情報の流れ
第五章 神経回路における多様な入出力パターン
第六章 記憶と学習の神経回路
第七章 脳の自発活動と神経回路
第八章 今後の神経回路研究
おわりに

□知識カードの例:(第一章 脳の情報処理を知るには神経回路を知る必要がある)~アイカードブック(iCardbook)は知識カードを編成した電子書籍です。

1 脳機能の一般的説明
2 脳機能の一般的説明 その二
3 脳機能は単一の脳領域だけでは説明できない
4 脳機能は単一の脳領域だけでは説明できない その二
5 脳機能は単一の脳領域だけでは説明できない その三
6 脳機能は単一の脳領域だけでは説明できない その四
7 神経細胞(ニューロン)レベルの研究の必要性
8 脳は神経細胞の集合である
9 脳機能は神経回路から生まれる
10 脳機能は神経回路で説明できる その二

『脳と情報——神経回路と記憶のメカニズム——』はアイカードブックの一冊です。

◎脳の原理を「神経回路」の視点から解説した、あまり他に例のない脳神経学の本。「神経回路」の視点から考えることで、たとえば、人工知能との違いも見えてくる。

 

■アイカードブック(iCardbook)については、こちらをどうぞ。

アイカードブック創刊の狙い | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/5063

本のネットワーク化 – iCardbook|知の旅人に http://society-zero.com/icard/network

日本人の情報行動の変化と<本>の未来 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/7396/#4

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