十九世紀末、社会科学者たちは進化論を応用して、「遅れた社会」、「進んだ社会」に分類し、それは植民地化や帝国主義を促進する結果をもたらした。I):「適者生存・優勝劣敗」が強者の論理へ流用され、帝国主義国による侵略や植民地化を正当化する論理になったとされる。その一方で、共産主義もまた社会進化論のパラダイムに準拠している。たとえばカール・マルクスはダーウィンに『資本論』の第一巻を献本し、進化論が唯物史観の着想に寄与したことを伝えていた。[編集部]
しかし、ひとつの文化を別の文化の基準で評価するべきではないとする「文化相対主義」の台頭により、「社会」に進化の概念を当てはめてはいけないという思想が広がった。この考え方によりかえって、社会や文化は人間固有のものとされ、社会は自然科学の対象ではなくなってしまった。
■参考文献
『人間以前の社会』 今西錦司(岩波文庫、一九五一年)
『人類進化論——霊長類学からの展開』第一章 霊長類学の発想 [九~一〇ページ] 山極寿一(裳華房、二〇〇八年)
『古代社会』 ルイス・モルガン 荒畑寒村訳(角川書店,一九七一年)原著一八七七年
『家族・私有財産・国家の起原』 フリードリッヒ・エンゲルス 戸原四郎訳(岩波文庫、一九六五年)原著一八八四年
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註
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