運動は連続的に変化する

ゲームの中で、キャラクターは走っていて魔法弾が飛んで来ると咄嗟に屈んで机の下にもぐります。剣戟が相手に届かないと思った瞬間、歩幅を大きく変化させて前進する。世界にあるアフォーダンスを精微に活用すればするほど、キャラクターの運動は知的になって行きます。

しかし、あらゆる瞬間に運動を切り替えられるわけではありません。人間でも不随意(自分の意のままにならない)時間がありますが、ゲームキャラクターはモーションを再生して切り替えるタイミングが限られており付随時間がとても長く、それがプレイヤー・キャラクターの運動の差となって現れます。つまり、ユーザーはそこでそのキャラクターが人工知能だと気付くのです。

これはキャラクターが運動を生成しているのではなく、モーションを再生していることによります。ゲームキャラクターのリアリティは実は意思決定よりも、この身体性のぎこちなさによって損なわれています。


■参考文献
AI最前線の現場から【スクウェア・エニックス】 キャラクターの身体を作る 三宅陽一郎 二〇一六年

★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>: —— 環境、身体、知能の関係から解き明かすAI—— 』を構成している「知識カード」の一枚です。

人工知能と人工知性
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