動物の教示行動

自分と相手との間に知識の差があることを双方が知っていて、教えるほうが自分の不利益を顧みずに相手の能力を向上させようとすることによって「教示行動」は発現する。

ライオンやチータなどの肉食動物、ミサゴなどの猛禽類には知られているが、サルや類人猿ではめったに見られない。霊長類には獲物を捕らえる技術が必要ないからであろう。I):唯一報告されているのはチンパンジーの二例だけで、母親が子どもに木の枝でナッツを割って見せたり、シロアリを繰り返し釣って見せて枝を渡したという報告である。

「心の理論」をもつ類人猿でも、自分が不利益をこうむっても相手の能力を高めようとすることはめったになく、あっても母親と子どもに限られるのである。


■参考文献
『考えるサル―知能の進化論』  リチャード・バーン 小山高正・伊藤紀子訳(大月書店、一九九八年)原著一九九五年

『霊長類学を学ぶ人のために』  西田利貞・上原重男編(世界思想社、一九九九年))

『家族進化論』第五章・第四節 心の理論と利他的行動  山極寿一(東京大学出版会、二〇一二年)

 

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I. :唯一報告されているのはチンパンジーの二例だけで、母親が子どもに木の枝でナッツを割って見せたり、シロアリを繰り返し釣って見せて枝を渡したという報告である。