「強い男」待望論

フロムと同様、ナチスからの逃亡経験を持つアーレントは、階級社会が崩壊し、人びとが「自由」で「バラバラ」になった社会こそが、ナチズムとスターリニズムという全体主義を生み出す最大の土壌になった」と主張した。※I):引用 『全体主義の起源 3』(みすず書房 一九七四年)

人は孤立化の不安に襲われた時、わたしたちを一つにまとめてくれる「強い男」を欲するのだ。※II):「営利社会においては人間生活は経済戦争という仮借ない競争における成功か失敗のいずれかの型に分けられるものとして経験され、なんとしてでも私的、個人的成功を遂げねばならぬという必要のみに全生活が集中されるため、市民としての義務と責任は耐え難い余計な重荷となってしまう。このような態度が、一人の『強い男』がこの重荷をすっかり引受けてくれる独裁という形式にきわめて好都合なのは勿論だが、それと同時に、全体主義運動の発展にとってはこの態度に内在する個人主義は障害でしかあり得ない。」(『全体主義の起源3』 第一章・第一節 (みすず書房 一九七四年))

■参考文献
『全体主義の起源 3』  ハンナ・アーレント 原著一九五一年


★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。
  

 

 

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I. :引用 『全体主義の起源 3』(みすず書房 一九七四年)
II. :「営利社会においては人間生活は経済戦争という仮借ない競争における成功か失敗のいずれかの型に分けられるものとして経験され、なんとしてでも私的、個人的成功を遂げねばならぬという必要のみに全生活が集中されるため、市民としての義務と責任は耐え難い余計な重荷となってしまう。このような態度が、一人の『強い男』がこの重荷をすっかり引受けてくれる独裁という形式にきわめて好都合なのは勿論だが、それと同時に、全体主義運動の発展にとってはこの態度に内在する個人主義は障害でしかあり得ない。」(『全体主義の起源3』 第一章・第一節 (みすず書房 一九七四年))