梅棹忠夫の「生態史観」

梅棹忠夫は、西洋対東洋という従来の世界史の枠組みを否定し、それに代わる、生態系の違いを念頭に、第一地域と第二地域という空間区分のなかで文明の展開を説明した。第一地域は、西ヨーロッパと日本を含む、ユーラシア大陸の周辺地域であり、第二地域は、西ヨーロッパと日本との間に展開するユーラシアの広大な大陸部分である。そして、西洋と東洋の間、ユーラシア大陸の中央の乾燥地帯であるイスラーム世界を「中洋」と呼んだ。

第二地域は前近代において、巨大な帝国のもとで繁栄した。しかし、近代になって、第一地域が第二地域に代わって発展する。それは、第一地域は、気候が温暖で、外部からの攻撃を受けにくい環境にあったため、第二地域から文化を輸入し、安定的で高度な社会を形成できたからであった。

参考文献:
文明の生態史観(中公文庫)』  梅棹忠夫(中央公論新社、1974年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック