専門家集団による武力の強化と支配階級による富の集中は、七千五百年前に数千人規模の首長制社会を生み出した。この社会に特徴的なのは、豪華な墓と宗教の寺院である。首長が死者とそれにまつわる宗教の力を借りて大きな集団の統率を図ったことを示している。I):宗教は死後の世界まで個人の行為が及ぼす範囲を広げ、死者と生者をつなげることで自己犠牲の精神に大きな理由と動機を与えた。自分のためでも近親のためでもない、首長の率いる集団のために奉仕し、命をささげるという新しい観念が生まれたのである。
これは次に登場する国家に引き継がれ、国体を支える基本的な精神として誇張され、利用されることとなった。家族の心性はついに国家まで拡大されたのである。
■参考文献
『銃・病原菌・鉄 一万三千年にわたる人類史の謎』(上・下) ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰訳(草思社、二〇〇〇年)原著一九九七年
『家族進化論』第六章・第九節 戦争の登場と自己犠牲の精神 山極寿一(東京大学出版会、二〇一二年)
★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。
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註
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