ワクフ制度の特徴:その2 寄進者本人による寄進財管理

その2.ワクフの設定と運営に関するすべての事項は、ワクフ設定文書(ワクフィ-ヤ)に記載された。

ほかの宗教の寄進文書においても、寄進の目的は記載された。しかし、寄進財の所有権は教会や寺院など宗教当局に移転される以上、寄進財の使用方法、寄進財からの収益の用途など、寄進財にかかわる細かな処分・運営が定められることはない。

ところが、ワクフの場合、それがワクフ財の管理人の指定を含めて、ワクフ文書において、それもワクフを設定する本人であるワクフ設定者によって取り決められた。そして、作成されたワクフ文書は、法と同様の効力を有した。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第6章:宗教・第3節:イスラム社会に普及するワクフ  加藤博(東京大学出版会、1995年)
イスラム世界の経済史』 第二部第5章:ワクフ(寄進)制度にみるイスラム市場社会  加藤博(NTT出版、2005年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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