現代哲学者の多くは、長らく「反=本質主義」「反=基礎づけ(真理)主義」を掲げてきた。
それゆえ、「自由」の〝本質〟を明らかにするという本書のマニフェストに対しては、多くの異議が寄せられることだろう。※I):<span class="tcy">20</span>世紀における悲惨なイデオロギー闘争を経験した多くの現代思想家たちのモチーフは、これらイデオロギーが掲げた「真理」や「本質」といった概念を、徹底的に相対化し突き崩すことにあった。いわゆる「無謬の前衛党」(共産党は絶対に正しいという信条)や、人間の「本質」からいって〝劣等種〟は絶滅されるべきである、といったイデオロギーがそうである。絶対に正しい思想や「本質」などといったものはない。そのことを繰り返し主張し続けた現代の思想家たちは、そのことによって、「真理」をめぐる争いに終止符を打とうと考えたのだ。
■参考文献
『連帯と自由の哲学~二元論の幻想を超えて~』 リチャード・ローティ 原著一九八八年
『偶然性・アイロニー・連帯―リベラル・ユートピアの可能性』 リチャード・ローティ 原著一九八九年
『脱構築とプラグマティズム——来たるべき民主主義』 ジャック・デリダ、リチャード・ローティほか シャンタル・ムフ編集 原著一九九六年
『グラマトロジーについて』 ジャック・デリダ 原著一九六七年
★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。
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註
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