イスラームは現代において、もっとも宗教らしい宗教である。イスラームは、ほかの世界宗教が歴史以前の時代に生まれ、多くの秘蹟に包まれているのに対して、7世紀の歴史時代の只中に形成された歴史的宗教であり、秘蹟の少ない合理的な宗教である。そして、7世紀に成立して以来、現在まで、強い活力と影響力を維持している。
その生命力の源泉は、イスラームが、先に宗教の二つのタイプとして指摘したウェーバーの倫理とスミスの道徳としての性格をともにもち続け、歴史の中で、その理念を制度化してきたからである。このことは、経済の領域の中でよく示されている。
参考文献:
『イスラームの誕生 信仰者からムスリムヘ』 フレッド・M・ドナー 後藤明監訳(慶應義塾大学出版会、2014年)
『メッカ―イスラームの都市社会(中公新書)』 後藤明(中央公論社、1991年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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