思考実験の罠

ここで問題にしたいのは、ロールズの思考の方法それ自体である。

〝思考実験〟は、問題を多面的に考えるための役には立つが、社会構想原理導出のための根本的な方法にはなり得ない。

なぜなら、その〝思考実験〟が設定する〝仮定〟それ自体の妥当性を、わたしたちは決して検証することができないからだ。

つまりわたしたちは、自身が導き出したい理論に都合のいいように、いくらでも思考実験の舞台を恣意的に設定することができるのだ。※I):たとえばリバタリアニズムの理論家マリー・ロスバードは、いわゆる「クルーソー状況」、すなわち無人島に流れ着いたロビンソン・クルーソーを思考実験の舞台として仮定し、そこから自身の信念に都合のいい理論を導出している(『自由の倫理学』 第二部・七 個人間関係 (勁草書房、二〇〇三年))。

■参考文献
『自由の倫理学―リバタリアニズムの理論体系』  マリー・ロスバード 原著二〇〇二年


★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。
  

 

 

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I. :たとえばリバタリアニズムの理論家マリー・ロスバードは、いわゆる「クルーソー状況」、すなわち無人島に流れ着いたロビンソン・クルーソーを思考実験の舞台として仮定し、そこから自身の信念に都合のいい理論を導出している(『自由の倫理学』 第二部・七 個人間関係 (勁草書房、二〇〇三年))。