ホモ・エコノミクス批判とその帰結(その1)

ホモ・エコノミクスに批判的な人々は、倫理なき利己的行動の肥大化が、現在の資本主義で問題となっている富の集中と格差を生み出したと主張し、節度ある富の獲得と他人を思いやる利他性の復権を呼びかける。イスラーム経済の文脈でも、そうした復権をホモ・イスラミクス(homo Islamicus)としてイスラーム的な理念化を試みる研究もある。たしかに、そうした主張の重要性は一目に値するかもしれないが、資本主義にどっぷりと浸かっている私たちが、現実問題として、利己的行動を抑え、利他的行動に軸足を置いた経済活動に一斉に転換するのはそう簡単なことではない。

参考文献:
Mehmet Asutay “A Political Economy Approach to Islamic Economics: Systemic Understanding for an Alternative Economic System,” Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 1(2), pp. 3-18, 2007. https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1735619

 


この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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