予防原則

閾値しきいちのレベルが正確かつ確実に見積もれないことが通常であるため、常に安全率を見込んで行動しなければならない。I):予防原則の行き過ぎた適用については、『恐怖の法則』 (勁草書房、二〇一五年)参照。

このような不確実性を伴う事象に関する意思決定の原則が予防原則である。予防原則とは、科学的知見の不十分さが、重大で不可逆的な悪影響を防止するための行動を取らないことの理由としてはならないという原則である。II):予防原則の具体的な効果として、挙証責任の転換が挙げられる場合が多い。予防原則が適用される場合、科学的説明責任は、環境を守ろうとする側ではなく、環境に負荷を与えようとする側が負うことになる。なお、この原則は、リスクが伴う場合にはなにもしてはならないという原則として理解されるべきではない。リスクの程度に応じた合理的な対策行動が必要である。


■参考文献
環境政策論 第三版』 第八章・第二節 予防原則(precautionary principle)  倉阪 秀史 二〇一五年

恐怖の法則予防原則を超えて』  キャス・サンスティーン 原著二〇〇五年

 

 

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I. :予防原則の行き過ぎた適用については、『恐怖の法則』 (勁草書房、二〇一五年)参照。
II. :予防原則の具体的な効果として、挙証責任の転換が挙げられる場合が多い。予防原則が適用される場合、科学的説明責任は、環境を守ろうとする側ではなく、環境に負荷を与えようとする側が負うことになる。なお、この原則は、リスクが伴う場合にはなにもしてはならないという原則として理解されるべきではない。リスクの程度に応じた合理的な対策行動が必要である。