ハートの法実証主義

以上から、ハートの法理論もまた、「法」の根拠が「自由の相互承認」にあることを述べたものと解釈することができる。

ハートが依拠する「法実証主義」は、法と(形而上学的な)道徳とを同一視しない法理論のことである。絶対に正しい「道徳」など見出し得ないがゆえに、これを根拠として法を設定することは不可能であるとハートはいうのだ。※I):ハートはいう。「ここでは法実証主義を、法が道徳の一定の要求を再現もしくは充足するということは、事実上しばしばそうであったとしても、決して必然的な真理ではないという単純な主張を意味するものと考えておこう。」(『法の概念』 第九章・第一節 自然法と法実証主義 (みすず書房、一九七六年))

これは、第四章で論じた「道徳・義務論的アプローチ(上巻・知識カード75)」に対する批判と受け取ることもできる。

■参考文献
『法の概念』  ハーバート・ライオネル・ハート 原著一九六一年


★この記事はiCardbook、自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (下)未来構築の実践理論』を構成している「知識カード」の一枚です。

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I. :ハートはいう。「ここでは法実証主義を、法が道徳の一定の要求を再現もしくは充足するということは、事実上しばしばそうであったとしても、決して必然的な真理ではないという単純な主張を意味するものと考えておこう。」(『法の概念』 第九章・第一節 自然法と法実証主義 (みすず書房、一九七六年))