自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ ——

(下)未来構築の実践理論

苫野 一徳

下巻では「自由の相互承認」の実質化のための方策が論じられる。法制度を、公教育・福祉を、人間の安全保障を、なぜ人間社会は必要としていて、またそれらはどうあらねばならないのかが解き明かされる。

 

アーレントの「現れの空間」、デューイの「グレイトコミュニティ」、見田宗介の「社会圏域論」、ネグリ=ハートの「マルチチュード」、柄谷行人の「遊動性」論等を点検した後、苫野が帰ってくるのはヘーゲルの「事そのもの」論である。「自由」はいかにして可能か、「人間的自由の条件」具体化の実践理論がここにまとめられる。

苫野 一徳(とまの いっとく)

 

一九八〇年二月二十八日、兵庫県生まれ。熊本大学教育学部准教授(二〇一七年二月現在)。

専門は哲学、教育学。早稲田大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(教育学)。生涯の研究テーマは「多様で異質な人たちが、どうすれば互いに了解し承認しあうことができるか」。

またこれまでの研究の具体化として、これからの公教育の、モデルになれるような学校を目指し、二〇二〇年四月の開校を目指すプロジェクト推進団体、一般財団法人軽井沢風越学園設立準備財団の発起人の一人にもなっている。

著書:『「自由」はいかに可能か—社会構想のための哲学』(NHKブックス)、『教育の力』(講談社現代新書)、『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『子どもの頃から哲学者』(大和書房)など。

インテリジェント・カード・ブック(intelligent card book)

略称「アイカードブック(icardbook)」

21世紀、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され、さらにモノ同士がデータ・情報をやりとりすることで、これまでにないサービスを実現する、モノのインターネット、IoT(Internet of Things)時代の鳥羽口に私たちはいます。モノが呼び交い、データ・情報を流通させる時代に、どうして本だけが閉じた系として存在し続けられるでしょうか。本と本とが呼び交い、交歓する世界(books as a service)の構築が急がれています。ただし モノのネットワーク化と本のネットワーク化とでは根本的な違いがあります。 モノ同士のデータ・情報のやりとりは、実際は記号の流通でしかありません。記号の流通で モノのネットワーク化は具体化できますが、 本のネットワーク化では「読む」という行為が必要です。

 

「読む」ことではじめて、記号は情報となり、そこへ行動・経験が加わり知識となり、集団にとっての知恵へと昇華していきます。そしてその「読む」の前提には、「このことはどの本に書いてあるだろう」という探索ニーズに対するソリューションが必要です。すでに英語圏(英語などの欧文書)ではこれを実現するための活動が始まっています(たとえば、GoogleBooks、あるいはPortable Web Publications for the Open Web Platform)。

 

「アイカードブック(icardbook)」は日本語圏(日本語による書籍)のための本のIoT実現へ向けた、ささやかな試みのひとつです。日本語圏の「知のエコシステム」を再起動させるための新しい本のカタチです。いわゆる「成書」は「閉じた系」を特徴とし論証性を軸に、一定の時間の経過を使いながら、最終ページまでに著者が読者の「説得」を試みる作品群と言えます。読者は読み進むうちに自分の頭の中が秩序立てられ、整理されていく快感を味わうでしょう。これに対し「アイカードブック(icardbook)」は、読者の関心、興味へ開かれた「オープン」の仕掛けを内蔵したひとつのサービス(books as a service)です。スマホなどモバイル端末での情報収集が当たり前になりつつある世界に投じられた、ロゴスとパトスの融合物としての書き物。読者は、自分の探し物の周辺に意外な「知の世界」があることを知る。本と読者との出会い、セレンディピティを演出する、新しい本のカタチです。

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