食物と体の大きさ

霊長類では、食物と体の大きさは密接に関係する。最も大型の仲間は木の葉を好む葉食者、最も小型の仲間は昆虫食者で、中間的な大きさの種は果実を好む傾向にある。I):霊長類を含む哺乳類の代謝量は体重の四分の三乗に比例する。つまり体重が大きくなるほど体重あたりに必要なエネルギーの量は少なくてすむのだ。つまり体の小さな種は栄養価の高い食物をせっせと食べ続けなければならない。ところが熱帯雨林の樹上にそれほどたくさんの虫はいない。樹上生活を営む昆虫食の霊長類は、だからあまり体を大きくはできなかった。

これは他の哺乳類とは対照的だ。例えば食肉類は体の大きさに関わらず動物食だし、偶蹄類は草を好む。霊長類の食物の多様化は、その消化器官に原因がある。


■参考文献
「食は社会をつくる:社会生態学的アプローチ」  中川尚史(『霊長類学を学ぶ人のために』所収[第三章] 世界思想社、一九九九年)

『サルの生涯、ヒトの生涯―人生計画の生物学』  デビッド・S・スプレイグ(京都大学学術出版会、二〇〇四年)

『サルの食卓』  中川尚史(平凡社、一九九四年)

『ヒトはどのように進化してきたか』  ロバート・ボイド、ジョーン・B・シルク 松本晶子・小田亮監訳(ミネルヴァ書房、二〇一一年)原著二〇〇二年

 

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I. :霊長類を含む哺乳類の代謝量は体重の四分の三乗に比例する。つまり体重が大きくなるほど体重あたりに必要なエネルギーの量は少なくてすむのだ。つまり体の小さな種は栄養価の高い食物をせっせと食べ続けなければならない。ところが熱帯雨林の樹上にそれほどたくさんの虫はいない。樹上生活を営む昆虫食の霊長類は、だからあまり体を大きくはできなかった。