[はじめに]『人工知能と商業デザイン』

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◎デザインを学ぶ人のためのミニ辞典。同時に「学習」「仕事」をデザインする人のためのヒント集。あなたの「勉強」「作業」は効率的ですか?きちんとデザインされていますか?人工知能の応用を考えていますか?

これは、境祐司 (Creative Edge School Books)氏の、『人工知能と商業デザイン』の「はじめに」を公開したブログ記事です。


はじめに

ITの世界は日進月歩である。次から次へと新しい技術が登場し、デジタル製品やサービスに取り込まれていく。この業界で働く人たちは、仕事をしながら学習し続けなくてはいけない。引退するまで勉強が続く。特に、テクノロジーに依存しているWeb(ウェブ)開発やデザインなどは、複雑・高度化が進み、やるべきことが増えているのだ。私は、専業である「電子出版」を実践しながら「読書階層構造」を持つデジタル教科書のテストを続けていた。デジタル本によって教育コストを飛躍的に下げることが可能だと考えていたからだ。

読書は「階層構造」を持つ。例えば、基礎知識がないと内容が理解できない「専門書」などは、下位にその本を読むために必要な複数の初心者向けの本が連なる。基礎知識がないまま、わかる部分だけをつまみながら読むこともできるが、「誤読」してしまう可能性が高いため、私は可能なかぎり避けている。「読書階層構造」は、政治や経済、歴史、科学、医療など、あらゆる分野に存在する。

この構造を理解している図書館員や書店員などは、本を探している人たちに「こちらの本も見ておくと、より理解しやすいですよ」などと教えてくれる。「専門書Aの「入門」に適した本は、この参考書Bです」、「この著者の最新作は十年前のデビュー作を先に読むことで二倍楽しめます」等々。私はロボティクスの取材活動を開始する際、事前学習を兼ねて、ロボット技術に関する専門書を手に入れた。ただ、初めての分野だったので、専門書は一旦保留にして、まず、子ども向けのロボット図鑑からスタートし、小学生向け、中学生向け、とレベルを上げながら、一カ月くらいの時間をかけて、専門書や論文が読める環境に近づけていったのである。

これを「読書階層構造」で見ると、下位に子ども向けの図鑑や学生向けの読み物、教科書、参考書などがあり、上位に基礎知識がないと理解しにくい専門書が配置されている。そして最上位には学術論文などを置く構造になっている。わからない箇所を調べながら、難解な専門書を読み進める方法は一見効率がよさそうに思えるが、高い確率で「誤読」する。なぜなら、知識の欠損部分を想像や思い込みで補ってしまうからだ。

この「読書階層構造」は、私がイメージしていた「新しいデジタル本」の重要な機能の一つだった。ディスプレイに表示されている本の表紙をタップすると、ぞろぞろと、その下に別の本が出てくる。第二階層、第三階層と下方向に伸びていくイメージだ。表紙をプレスすると、「この本には技術に関する解説がありませんが、こちらの本の第二章で補完することができます」といったポップアップを表示する。このシステムを利用すれば「埋れている良書」を浮上させ、再評価のきっかけを与えることも可能だ。

このようなシステムは、図書館員や書店員の暗黙知を形式知化した仕組みであり、デジタル本ならAI(人工知能)のテクノロジーによって、実現できるのではないかと考えていた。夢物語だったAIも二〇一四年以降、急速に発展。私たちにとって身近な技術になりつつある。本書は「ある特定の分野に絞った読書階層構造のアプリケーション化」を「デザイン」の領域でトライアルした試行錯誤のアーカイブである。

 

目次構成

はじめに

第一章 デザインの要素

第二章 「構造と視覚表現の分離」と「手作業によるデザイン」の消滅

第三章 「思考と記憶」~AIの活用

第四章 クリエイティブAI

□知識カードの例:(第一章 デザインの要素)~アイカードブック(iCardbook)は知識カードを編成した電子書籍です。
1. レイアウト       【関連知識カード】:整列、ブロック、カラム、秩序
2. 空間レイアウト    【関連知識カード】:回覧性
3. 回覧性         【関連知識カード】:空間レイアウト、動線
4. 動線          【関連知識カード】:回覧性、空間レイアウト
5. 秩序          【関連知識カード】:レイアウト、整列
6. 主見出し        【関連知識カード】:脇見出し、レイアウト
7. 脇見出し        【関連知識カード】:主見出し、レイアウト
8. 整列           【関連知識カード】:秩序、整理、整頓、整理整頓
9. 整理           【関連知識カード】:整頓、整理整頓、整列
10. 整頓          【関連知識カード】:整列、整理、整理整頓
11. 整理整頓       【関連知識カード】:整理、整頓、整列、レイアウト
12. ヨゼフ・ミューラー=ブルックマン【関連知識カード】:ブロック、カラム、モジュール、レイアウト
13. ブロック        【関連知識カード】:カラム、モジュール、レイアウト
14. カラム         【関連知識カード】:ブロック、モジュール、レイアウト
15. モジュール      【関連知識カード】:ブロック、カラム、レイアウト
16. 錯視          【関連知識カード】:整列、地と図
17. 規則性        【関連知識カード】:秩序、ブロック、整列
18. SN比          【関連知識カード】:ノイズ、スキュアモーフィックデザイン
19. ノイズ          【関連知識カード】:SN比、垢抜けない感じ
20. 地と図         【関連知識カード】:重量
21. 重量          【関連知識カード】:地と図、カラム、ブロック
22. ポスター        【関連知識カード】:レイアウト、地と図
23. 挿し絵         【関連知識カード】:SN比、情緒的価値
24. 飾り罫線       【関連知識カード】:SN比、ノイズ
25. デザイン構成力   【関連知識カード】:SN比、コンテキスト、”トンがった”雑誌
26. 比較広告       【関連知識カード】:デザイン構成力、万人向け
27. 写植          【関連知識カード】
28. メタモルフォーゼ  【関連知識カード】:伸縮可能なデザイン、Responsive Web Design

 

『人工知能と商業デザイン』はアイカードブックの一冊です。

 

■アイカードブック(iCardbook)については、こちらをどうぞ。

アイカードブック創刊の狙い | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/5063

本のネットワーク化 – iCardbook|知の旅人に http://society-zero.com/icard/network

日本人の情報行動の変化と<本>の未来 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/7396/#4

◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック