現在でも多くの人々が、「人類は闘争能力に秀でた優れた狩猟者として進化した」という幻想を信じている。この誤解は、一九五〇年代に発表された「狩猟仮説」によるところが大きい。I):二度の世界大戦を経験した西欧社会を含むいわゆる先進国では、アカデミックな世界だけではなく一般大衆の間でも、人間の攻撃性への関心が高くなっていた。そこへ提出された人類学者レイモンド・ダートの論文、その論文に触発され研究を進めたロバート・アードレイの『アフリカ創世記——殺戮と闘争の人類史』の社会的影響力は大きかった。
当時、二度の大戦で自国の町や生活の場が戦場となり、数多の悲劇を目の当たりにした人々にとって「戦争が人間にとって避けられない本能による調停の手段」であることが示されることはある種のあきらめの機縁ともなり、「戦争によって自由を守ることに成功した国」との自負へともつながったのだった。[編集部]
この仮説では、約二百万年前のアウストラロピテクス・アフリカヌスが、動物の骨を用いた狩猟を始め、それが互いの闘争にまで発展したと説明された。
■参考文献
『狩りをするサル——人間本性起源論』 ロバート・アードレイ 徳田喜三郎訳(河出書房新社、一九七八年)原著一九七六年
『人はなぜ殺すか——狩猟仮説と動物観の文明史』 マット カートミル 内田亮子訳(新曜社、一九九五年)
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註
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