グローバル化の波とインターネットの普及は、フラットで均質な世界をもたらした。世界のどこでも人々は同じ情報を共有でき、同じ価値観の元に暮らせるようになったからである。
しかし、人間の脳は五感を超えてそのような広大な領域に対処できるようにはできていない。相変わらず身体のつながりをもとに信頼関係を構築しようと欲している。
前述したように、現代の社会にも集団規模に応じた古いコミュニケーションの方法が残っている。情報機器に用いられた視覚と聴覚以外の感性、すなわち嗅覚、味覚、触覚を用いてそのコミュニケーションの利用を考えるべきである。
■参考文献
「サルから考える人間のコミュニティの未来」 山極寿一(『ネットコミュニティの設計と力』所収 [一二九~一六〇ページ] 近藤淳也監修(角川学芸出版、二〇一五年))
「こころの起源―共感から倫理へ」 山極寿一(『<こころ>はどこから来て、どこへ行くのか』所収 [一五五~二〇〇ページ] 河合俊雄・中沢新一・広井良典・下條伸輔・山極寿一(岩波書店、二〇一六年)
★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。
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