伊谷はこの霊長類の社会進化モデルを用いて、ルソーの『人間不平等起源論』を批判した。
伊谷は平等性の起源はルソーが言うよりはるかに古いと考えた。彼は、霊長類の進化史の初期に現れた単独生活やペア生活は対等(絶対平等)であり、その後社会がより大きくなるにつれ個体間の優劣に基づく先験的不平等が生じて、さらに類人猿で不平等を抑えるような「条件的平等I):条件的平等:遊びや食物の分配などの社会交渉で、あたかも優劣関係を見えなくするような関係が成り立つこと。」が進化したと考えた。
■参考文献
『人間不平等起源論』 ジャン-ジャック・ルソー (講談社学術文庫、二〇一六年)原著一七七五年
「人間平等起源論」 伊谷純一郎(『自然社会の人類学:アフリカに生きる』所収[三四九~三八九ページ] アカデミア出版会、一九八六年)
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/book/038.html
『霊長類の社会構造』(生態学講座第二〇巻) 伊谷純一郎(共立出版、一九七二年)
『人類進化論―霊長類学からの展開——』第六章・第二節 不平等社会と平等社会 山極寿一(裳華房、二〇〇八年)
関連知識カード:食物がゴリラとチンパンジーの社会を分けた?/(下巻)分かち合いと所有
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