今西錦司は「文化」という言葉を、より広い意味を持つものへと再定義した。
彼によれば、文化とは遺伝によらず受け継がれる行動であり、それには知識や技術の獲得のみではなく、社会生活を維持する方法も含まれる。ニホンザルの末子優位の法則もその一つであり、今西はこれを「プレカルチュア」と呼んだI):プレカルチュアという言葉は、本能によってではなく、集団内の他個体との交渉によって共有されるものを指す。ヒトの文化は規律や教育といった、サルにはない能力と関連した意味を持つため、それと混同しないようにこれらの言葉が用いられた。。
■参考文献
「ニホンザル研究の原状と課題―とくにアイデンティフィケーションの問題について―」 今西錦司(『今西錦司全集 第七巻』所収[一〇〇~一四七ページ] (講談社、一九七五年))
「カルチャーの概念―アイデンティフィケーション論その後―」 伊谷純一郎(『サルの文化誌』所収[二六九~二七八ページ] 西田利貞・伊沢紘生・加納隆至編(平凡社、一九九一年))
Kawamura (1959) The process of sub-culture propagation among Japanese macaques. Primates. 2(1):43-60.
https://link.springer.com/article/10.1007%2FBF01666110
関連知識カード:幸島のサルのイモ洗い/群れに伝わったイモ洗い/(下巻)ニホンザルのイモ洗い行動
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