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イスラーム世界はネットワ-ク社会

異文化間交易の世界史

イスラーム世界の経済繁栄は、それ自体が一つの経済圏を構成したというよりは、国際交易ネットワ-クにおける結節点としての機能から、周辺に存在していたいくつもの経済圏を結びつけることによってもたらされたという側面が強い。* 

イスラーム世界は、構造的には、面ではなく、点と線からなるネットワーク社会であった。鳥瞰的にみるならば、イスラーム世界は、点(都市)と線(道)の幾何学模様の観を呈する。しかし、定点(都市)で観察すれば、ひととものがひっきりなしに出入りする社会、それがイスラーム世界のイメージである。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第1章第1節:生態系・地理的立地  加藤博(NTT出版、2005年)
異文化間交易の世界史』  フィリップ・D. カーティン 田村愛理ほか訳(NTT出版、2002 年)
コーヒーとコーヒーハウス―中世中東における社交飲料の起源』  ラルフ・S・ハトックス 斉藤富美子・田村愛理訳(同文館、1993年)
イスラム世界の成立と国際商業~国際商業ネットワークの変動を中心に』  家島彦一(岩波書店、1991年)

*  このことは、これまでの世界経済史研究で論争となった、ピレンヌ・テーゼ、近代世界システム論など、世界の流通経済の中で果たしたイスラーム世界の位置づけからもあきらかである。

■関連知識カード/章説明他:
ヨーロッパ中心史観からくるバイアス
世界システム論


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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