それは、先に述べた、交易ルートの治安確保の問題と関係する。イスラーム世界では、内陸交易ルートの治安は地域の有力者たちとのヒマーヤ契約の集積によって維持された。
これに対して、近世のヨーロッパ商人たちは、イスラーム世界での自分たちの経済活動を守るために取った手段は、まことに対照的である。
つまり、かれらは、交易ルートの安全を自らの武力で、次いで国家の軍隊でもって確保しようとしたのである。国家もまた、貿易収支の黒字を確保するために、その役割を積極的に担った。
参考文献:
「世界経済史におけるイスラ-ムの位置」加藤博 『社会経済史学の課題と展望』 社会経済史学会編(有斐閣、2002年)
『東インド会社 巨大商業資本の盛衰(講談社現代新書)』 浅田實(講談社、1989年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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