道徳的に言って、人間は生まれの差によって社会的成功に差が出るようなことがあってはならない、それゆえ生まれの差を知らないという〝思考実験〟から理論を始めよう、そうすれば、生まれの差による不平等を正す正義の原理が導出できる……。
ロールズが言っているのは、このような循環論法である。要するに、原初状態という〝仮定〟は、ロールズの〝道徳的信念〟にとって都合のいい、きわめて恣意的な仮定になってしまっているのだ。
■参考文献
『正義論』 ジョン・ロールズ 原著一九七一年※I):戦後、公民権運動やベトナム戦争、学生運動に特徴付けられる社会正義に対する関心の高まりがアメリカにあった。これを背景にした学術的正義論の嚆矢となったと称される書。この本を巡ってその後多くの論文・書籍が世に出ることとなったが、ロールズは一九九三年それまでの議論を踏まえ、『政治的リベラリズム』を発表した。
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