なぜ経済学は経済を救えないのか —— 資本基盤マネジメントの経済理論へ——

(下)政策展開の経済理論

倉阪 秀史

人間の経済を支える実物的な基盤である「資本基盤」の持続可能性を確保するためには、市場外的な意思決定をつうじて、資本基盤の量を適正に保つとともに、その量に応じた「手入れ」が行われるようにする必要がある。このためには、人間の経済が実物界に支えられていることを再認識する新しい経済学の枠組みが必要となる。それも政策展開を念頭に置いた経済理論が。

 

第一章 基本概念/第二章 市場による決定が行える範囲/第三章 持続可能性を確保するための市場外の判断/第四章 持続可能性を確保するための政策群

倉阪 秀史(くらさか ひでふみ)

 

一九六四年、三重県生まれ。千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(公共研究専攻)(二〇一七年二月現在)。

専門は、環境政策論、環境経済論、エコロジカル経済学、政策・合意形成論。一九八七年東京大学経済学部経済学科卒業。同年環境庁入庁。九四年から九五年まで米国メリーランド大学客員研究員。九八年千葉大学法経学部助教授、二〇〇七年同准教授、〇八年同教授を経て、十一年より現職。

地方自治体の再生可能エネルギー供給量の推計を行う「永続地帯」研究をすすめる(http://sustainable-zone.org/)とともに、「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」(Open Project on Stock Sustainability Management : OPoSSuM オポッサム)の代表責任者を務める(http://opossum.jpn.org/)。特定非営利活動法人地域持続研究所理事長。

著書:『環境政策論[第三版]』(信山社)、『政策・合意形成入門』(勁草書房)、『環境と経済を再考する』(ナカニシヤ出版)、『環境を守るほど経済は発展する―ゴミを出さずにサービスを売る経済学』(朝日選書)など。

インテリジェント・カード・ブック(intelligent card book)

略称「アイカードブック(icardbook)」

21世紀、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され、さらにモノ同士がデータ・情報をやりとりすることで、これまでにないサービスを実現する、モノのインターネット、IoT(Internet of Things)時代の鳥羽口に私たちはいます。モノが呼び交い、データ・情報を流通させる時代に、どうして本だけが閉じた系として存在し続けられるでしょうか。本と本とが呼び交い、交歓する世界(books as a service)の構築が急がれています。ただし モノのネットワーク化と本のネットワーク化とでは根本的な違いがあります。 モノ同士のデータ・情報のやりとりは、実際は記号の流通でしかありません。記号の流通で モノのネットワーク化は具体化できますが、 本のネットワーク化では「読む」という行為が必要です。

 

「読む」ことではじめて、記号は情報となり、そこへ行動・経験が加わり知識となり、集団にとっての知恵へと昇華していきます。そしてその「読む」の前提には、「このことはどの本に書いてあるだろう」という探索ニーズに対するソリューションが必要です。すでに英語圏(英語などの欧文書)ではこれを実現するための活動が始まっています(たとえば、GoogleBooks、あるいはPortable Web Publications for the Open Web Platform)。

 

「アイカードブック(icardbook)」は日本語圏(日本語による書籍)のための本のIoT実現へ向けた、ささやかな試みのひとつです。日本語圏の「知のエコシステム」を再起動させるための新しい本のカタチです。いわゆる「成書」は「閉じた系」を特徴とし論証性を軸に、一定の時間の経過を使いながら、最終ページまでに著者が読者の「説得」を試みる作品群と言えます。読者は読み進むうちに自分の頭の中が秩序立てられ、整理されていく快感を味わうでしょう。これに対し「アイカードブック(icardbook)」は、読者の関心、興味へ開かれた「オープン」の仕掛けを内蔵したひとつのサービス(books as a service)です。スマホなどモバイル端末での情報収集が当たり前になりつつある世界に投じられた、ロゴスとパトスの融合物としての書き物。読者は、自分の探し物の周辺に意外な「知の世界」があることを知る。本と読者との出会い、セレンディピティを演出する、新しい本のカタチです。

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